消えゆく写真雑誌へのオマージュ

相次ぐ写真雑誌の終了

写真雑誌『フォトテクニックデジタル』が休刊を表明しました。同誌は数年前から路線を変更し、女性ポートレート、サブカル寄りに大きくかじを切って面白い誌面を作っていただけに残念です。

これも時代の流れでしょうが、昭和から平成の時代に隆盛を極めた写真雑誌は長らく写真文化の裾野を広げてきたと思います。

 

 

その写真雑誌が消滅の危機に瀕しています。コロナ禍の2020年春以降、『アサヒカメラ』『月刊カメラマン』『日本カメラ』の三大写真雑誌が相次いで休刊となっています。

大口の広告主であった写真材料を扱う旧来の写真関連業者が次々と倒産・廃業に追い込まれており、スマホの普及により国内のカメラ販売も不振を極めていることから、コロナ収束後も再開は難しい(『日本カメラ』は会社精算しています)ものと思われます。

当店も主業務である撮影・広告制作業務の傍らDPE(現像・焼付)業務を取り扱ってきましたが、3年前に外注に切り替えました。

8ミリ映写機を見かけなくなったのと同様、近い将来においてフィルムタイプのカメラも骨董品といったポジションに移行していくものと思われます。

 

コニカS35

 

8ミリ映写機とYou Tube

ところで、8ミリで映画を撮っていたのと今のユーチューバーは違う層の人だと思います。むろん、どちらが良いといった話ではなく。

写真もいずれそうなるでしょう。先細りしながら。写真愛好家には今が幸せな時代の終末期かもしれません。

 

 

文化って寄せ鍋みたいなもので、写真文化を支えているのはひと握りのプロじゃなく、雑多なアマチュアなんだと思います。

 

写真雑誌が休刊に追い込まれる中で、Instagramは依然好調です。意地の悪い見方をすればInstagramが写真文化を根こそぎさらっていったようにも見えますが、そんな単純なものではなく、むしろ一般ユーザーのみならず写真愛好家にとってもSNSが表現の場として大きな受け皿となっているのは間違いありません。

紙媒体からインターネットに舞台を移し、写真文化のあり方にも大きな影響が出ていますが、一方でコストや機器にとらわれることなく写真を楽しむことのできるデジタルフォトはこの分野への参入障壁を低くし、写真文化の裾野を大きく広げてきたといえます。

私は一貫してその状況を歓迎し、支持してきました。インターネット黎明期にいち早く日本全国から参加できる写真サークルを展開し、アサヒカメラから取材要請を受けたこともあります。

独立してからもインターネットを活用し、多くの顧客を獲得し、コミュニティを形成してきました。

 

スマホと流行歌と写真文化の相関性

 

スマートフォンの登場は私たちの生活の多くを一新しました。新しいものが興ると旧いものが消えてゆくのは世の定め。オーディオ機器と流行歌が失われ、新聞購読が激減し、折込広告がダメになり、いままたカメラと写真文化が失われようとしています。

写真文化の広大な裾野が失われると、写真を撮る「機能」だけが残ります。

iPhoneのカメラの優れているのは、レンズやセンサーが良いからではありません。風景を、人物を、草花を、食べ物を、それぞれ撮影した際にどのように処理すれば素敵な写真に仕上がるか、そのプロファイルを詰め込んでいるが故に優れているのです。

 

ただ、iPhoneのカメラの作り込みが秀逸なのは今さら言うまでもないですが、鮮鋭度が高すぎて実際よりも美しく描いてしまいます。

また、誰が撮影しても同じような画を吐き出します。画像処理用のフィルターもたくさん出回っていますが、これも同じような処理が組み込まれています。

表現に知識も技術も必要としないのは素晴らしいことだけれど、例えば現代人の色彩感覚がおかしくなっていくんじゃないか、そんな風にも思います。

 

近年のTVのネイチャードキュメンタリーなどもしばしば偽色で制作されているのを見かけます。これもスマホの弊害のひとつとみていますが、制作者の立場からみればそれも表現であるといえます。

このようにデジタル化のメリットと弊害(デメリット)は表裏一体です。

 

テクノロジーは二律背反

どうも文明批判のように聞こえてしまいそうですが、テクノロジーは古来より二律背反です。新たな可能性や豊かな暮らしをもたらす一方で、旧来の価値を覆し犠牲を強いるという矛盾を内包しているのです。もっと言えば、旧来の価値を否定することなしに新しい価値を創造することなんてできやしないでしょう。

私たちは何かを手にするかわりに手にしていた何かを手放さなければならないのですが、そのことをリアルタイムで意識することは意外と稀です。

失ってはじめて知ることの、なんと多いことか。

 

そんな風にして進歩してきた人間社会も、なかんずく文化の興亡も、サイクルがいよいよ早くなって目が回りそうですが、目を回しながらも写真文化の終焉をみつめ、写し留める使命が私たちの世代には残っているようです。それが消えゆく写真雑誌へのオマージュになると信じて。

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投稿者プロフィール

今井 賢司
今井 賢司プロモーションオフィス リバーシ 代表
フォトグラファー(フォトマスターEX)・ビデオグラファー・終活カウンセラー1級

立教大学卒業後広告代理店・リゾート勤務を経て2008年独立
宣材写真・ビジネスプロフィール写真・婚活写真など日常的な人物写真のスタジオワークをメインに活躍中 ミスコン・ミセスジャパン、ダンス・音楽イベントなどの公式撮影、各種オーディションの撮影経験豊富

会社勤めの経験も豊富。就活のアドバイスやビジネス向けのパーソナルブランディング、映像・写真・WEBを活用した視覚的な広告・営業戦略が得意です。出張撮影、映像制作、ホームページ制作おまかせください

終活カウンセラーとして「終活サポート ワンモア」を主宰。異業種提携による終活のお手伝いの傍ら終活講座やカルチャー教室などミドル~シニア世代向けのイベントを企画開催しています

日光国際音楽祭® 公式カメラマン
ミセスジャパン2020栃木選考会公式フォトグラファーほか
終活サポート ワンモア主宰
終活カウンセラー1級
エンディングノートセミナー講師養成講座修了(終活カウンセラー協会®)

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