一生忘れられない「遺影」の話…ウィズコロナ時代の「生前遺影」を考える

「ウィズコロナ」は覚悟の象徴

新型コロナウィルスは私たちの日常を、それまでとはまったく違ったものに書き換えてしまいました。

リモートワークやWEB会議に代表されるように働き方が変わり、オンライン飲み会やソーシャルディスタンスといった交友関係も変わり、離れて暮らす家族との付き合い方までもが変わってしまいました。

コロナとの共存を余儀なくされたこの状況を「ウィズコロナ」と呼び、コロナが変えてしまったこの時代は「ウィズコロナ時代」などと呼ばれています。

では、このウィズコロナ時代はいつまで続くのでしょうか?少なくともワクチンが開発され、広く行き渡るまでに最短でも1年半といわれています。5年10年といった長期戦になるかもしれません。

その間私たちはウィルスの脅威にさらされ、恐怖を感じながら暮らしていかなければならないのかと思うと暗澹たる気持ちになりますが、それがまさにウィズコロナという言葉に象徴され、また要求される「覚悟」であると思います。

2020年、この春は大変なことがたくさん起こりましたが、この春に起きたことはこの先もまた再現される可能性が高いのです。

 

衝撃を与えた著名人の死

新型コロナの脅威が広まり始めた3月にはコメディアンの志村けんさんが、緊急事態宣言が発令された翌4月には女優の岡江久美子さんが新型コロナによって亡くなりました。

お二人ともプロフェッショナルとして長いキャリアを誇り、お茶の間での認知度も高く、また好感度も高かったので世間に与えたショックは大きいものだったと思います。

私はひとの死に有名人も一般人もないと思っていますが、この二人の死が衝撃的だったのは、その最期に家族が立ち合って手を取ることすら許されなかったというむごたらしい事実が初めて広く知られるようになったことです。

感染拡大を防ぐため、お二人とも葬儀場の担当者によって丁重に荼毘に付され、遺骨となって家族のもとに帰りました。

こんな残酷なことが、それも人権意識も社会制度も整った現代日本に於いて発生するということに衝撃を受けたのではないでしょうか。

 

それも、短期間に急激に容体が悪化し、家族や親しい人にことばを遺すことすらかなわなかったようです。

それぞれプロフェッショナルとして栄華を極め、のこしたい言葉もあったことでしょう。まだやり残したこともたくさんあったでしょうし、身辺整理もあったでしょう。あらためてご冥福をお祈り申し上げます。

 

ウィズコロナ時代の終活を考える

写真館を経営しており、終活カウンセラーとしても活動しておりますので、ここで遺影写真を考えてみます。

著名な芸能人のお二人の場合、たくさんの写真が遺されています。それも、当代一流と呼ばれる写真家たちの手による素晴らしい肖像写真がたくさん。

著名人の葬儀に飾られる遺影写真こそが理想の生前遺影である」と私は考えています。あんな風に、活き活きとした写真を残していただきたいものです。私どものセミナーにお越しになった方にはお聞き覚えがあるかもしれません。

遺影写真は亡くなる直前の姿である必要はありません。その人がその人らしく輝いていた時期の、輝いていた姿を遺すことが望ましいと私は考えています。

 

ですが、芸能人であるお二人のケースはむしろまれなケースで、一般の方の中には予想だにしなかった事態で写真を遺すことなどできなかった人も多いと思います。

また、志村けんさんたちに於いても遺影写真はともかく、それ以外のいわゆる「終活」に属することの多くはおそらく手付かずだったのではないでしょうか。

 

終活は「人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ、今をより良く自分らしく生きる活動」と終活カウンセラー協会では定義しています。

コロナの恐怖を潜在的に感じているこのウィズコロナ時代にこそ、「自分を見つめ、今をより良く自分らしく生きる」ための終活が重要になってくるのではないかと思います。

 

リレーションシップの価値は変わらない

「オンライン合コン」は水を飲んでいてもわからない??

ウィズコロナ時代は気軽に人と会って触れ合うことはできなくなりました。その意味ではオンオフを問わず人間関係のありかたは大きく様変わりしています。

先日、近くに居合わせた若者の会話ですが、

「オンライン合コンっていいよな」

「いいよな、飲み代かからなくて」

「基本的に(酒代は奢りではなく)自分もちだし」

「そうそう」

「グラスに注いどけば水でも多分わかんないもん」

え?…なんだか落語の熊八を思わせるような会話ですが、これもウィズコロナを象徴しているといえそうです。

 

ただ、人間関係の表面的な在り方はそんな風に変化していくことはあっても、人間関係の、本当に大切な人との関係というものは変わるものではありません。

どんな時代を迎えても自分自身の価値はかわりませんし、他人の価値も同様です。ならば人間関係の価値も変わりません

人間関係に変わりはないのだとしたら、大切なことは備え=危機管理です。

危機管理の要諦は「最悪の事態に備えおくこと」といえば、多くを語る必要はないかもしれませんね。

 

撮り直しのできない今の姿を遺す

私は以前から、いまの自分自身を象徴する肖像写真を定期的に撮影することを勧めてきました。老若男女の別なくです。

毎日鏡でみていると気づかないものですが、一年経つごとに人の姿は変わっていくのです。

いま何歳の方であろうと、5年前10年前のご自身の写真をみれば「ああ、若かったな」と思うものです。

若いことが必ずしも尊いとは思いませんが、時間は一方通行で人生は片道切符です若い頃には戻ることができません。

だからこそ、撮り直しのできない今の姿を遺すことを、おすすめしたいのです。家族にではなく、5年後10年後のご自身に遺してください。

 

「自分史」を遺すのに文才は要らない

折々の、自身の写真の集積は、いずれ自分自身の歴史を形成するようになるでしょう。

生まれた時からの自分自身の主要な写真を並べて、そこに出来事やエピソード、想い出を書き込んでいけば「自分史」の出来上がりです。文才なんて要りません。

そして、コロナでなくてもひとはいつ何があるかわかりません。だから、その時々の自分の肖像は自分の人生を表わすものと思って撮影すべきです。

これは私の尊敬する昭和の大写真家 故 土門拳さんのいわば受け売りなのですが、私が日々スタジオでファインダーを覗くときはそのことを頭の片隅にいつもとどめ置いています。

 

まずはエンディングノート、終活ビデオレターを

エンディングノート 終活サポート ワンモア生前遺影をテーマにお話しすると、どうしても終活の話になりますが、これから終活をされるのでしたらまずはエンディングノートを書いてください。

エンディングノートを書くことは今の自分自身を見直す良いきっかけになると思います。私たち終活カウンセラーはみなエンディングノートを書いていますが、いままで取り組んできたことやこれからチャレンジしたいことなど明確になってきます。いわば「人生の棚卸し」ですね。

 

もうひとつお勧めしたいのが、ビデオレターです。よく結婚披露宴でビデオ映像により親しい人にメッセージを贈ったりしますが、それの終活版です。

私たちは「終活ビデオレター」と呼んでいますが、感謝の気持ちや気にかけていることなどを映像に遺すことで、その人の温もりや存在を遺すことができると思います。

 

 

 

 

死者には安らかに眠る権利があると思う

コロナ騒動が本格化する少し前になりますが、元プロ野球選手・監督・評論家の野村克也さんが亡くなりました。

無名の存在から超一流の域にのし上がった選手としての実績もさることながら、その指導力、人材育成、戦略、遺した名言と優れた指導者であり、尊敬するビジネスパーソンでした。

その野村さんの葬儀に於いて残念なことがありました。ご親族の方が野村さんのご遺体の写真を撮影し、SNSに投稿されたのです。この件は賛否両論ありました。

当事者ではないので、その是非については申し上げません。ただ、私が感じたのは「死者には安らかに眠る権利があるんじゃないのか」ということです。

この件はまた別の機会に法律の専門家を交えて深く検証してみたいと思っていますが、生前遺影のあり方を考えるうえでも気になる出来事だったのでここに取り上げました。

 

一生忘れられない「遺影」の話

遺影写真は1枚だけ飾るものという慣習がすっかり定着していますが、フィルムや写真の大伸ばしが高価だった時代の名残でしょう。

遺影写真にはこれといった決め事はありません。額縁は黒で…みたいな決まりも最近はなくなってきています。

むしろ写真集やスライドショームービーのようにして、たくさんの想い出とともにシェアする。そんな時代になるんじゃないかと思っています。

また、私自身、そんな風に遺影写真のありかたを変えていくことに力を尽くしていきたいと考えています。

 

 

私は以前、ご愛顧いただいたご常連さんにこんなことを言われたことがあります。

「私の葬儀には、あなたに撮ってもらった写真をお花みたいにたくさん飾ってもらって、写真と一緒に見送ってもらうの」

撮影者として、私がこれまでに頂戴した言葉の中で最も名誉な言葉だったと思います。一生忘れません。冥利と思うべきでしょう。

 

その人の人生を映し留める、そのくらいの覚悟をもってこれからも写真室に立ち続けます。

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投稿者プロフィール

今井 賢司
今井 賢司プロモーションオフィス リバーシ 代表
フォトグラファー(フォトマスターEX)・ビデオグラファー・終活カウンセラー1級

立教大学卒業後広告代理店・リゾート勤務を経て2008年独立
宣材写真・ビジネスプロフィール写真・婚活写真など日常的な人物写真のスタジオワークをメインに活躍中 ミスコン・ミセスジャパン、ダンス・音楽イベントなどの公式撮影、各種オーディションの撮影経験豊富

会社勤めの経験も豊富。就活のアドバイスやビジネス向けのパーソナルブランディング、映像・写真・WEBを活用した視覚的な広告・営業戦略が得意です。出張撮影、映像制作、ホームページ制作おまかせください

終活カウンセラーとして「終活サポート ワンモア」を主宰。異業種提携による終活のお手伝いの傍ら終活講座やカルチャー教室などミドル~シニア世代向けのイベントを企画開催しています

日光国際音楽祭® 公式カメラマン
ミセスジャパン2020栃木選考会公式フォトグラファーほか
終活サポート ワンモア主宰
終活カウンセラー1級
エンディングノートセミナー講師養成講座修了(終活カウンセラー協会®)

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