デジタル時代の撮影メソッド

学生写真の頃はひとつの作品を完成させるのに36枚撮りのフィルムを10本、正味370～380枚撮影することが目安とされました。「数撃ちゃ当たる」ではなく、一定量の撮影をこなすなかで、いま自分が追っているテーマに関する問題意識が鮮明になり、少しずつ洗練されてゆく。いま振り返ると、薬品の匂いの充満する暗室でそんなことを教えられたように思います。

当時は撮影しただけコストが生じるので、一枚一枚を丁寧に撮影しつつ数日かけて撮影したわけですが、写真の仕事に入ったときに今度は「お前はフィルムを使いすぎだ」とよく叱られました。叱られても、撮影の手法というのは簡単には変えられないもので、苦労したのを思い出します。

デジタルフォトの時代になって、撮影のボリュームはコストに反映されなくなりました。気の済むまで撮影することができます。

今から学生写真をやり直したいような気にもなりますが、暗室作業を含めアナログ写真の世界にどっぷりと浸かることができたのは、自分にとって財産だったと思います。

一方で、沢山撮影できることに甘え、無駄撃ちになったり、一枚一枚が雑になったりすることのないように自戒しなければなりません。

特にポートレートにおいて大切なのは一期一会を大切にし、モデルさんの存在をしっかり感じながら写し留めること。その前提のなかでデジタルフォトのよさを活かし切ることが求められます。いろいろな仕草、表情、雰囲気を試しながら、まだ見えていないモデルさんの隠れた魅力を探り当てるように撮影を重ねます。

 

デジタル時代の撮影メソッド

黒のベルボトムがよく似合うおしゃれなモデルさん。瑞々しい大人っぽさと健やかさが同居したプロフィールは全体に動きをつけて撮影しました。

動きをつけるのはただ動いてもらえばよいというものではありません。実際に動いてもらうこともあるし、動いて見えるようなポージング、仕草を施すこともあります。

そして、時には撮影の意図を説明し、実際に撮ってすぐ見せたりしながら「撮影」という行為を共有し、少しずつ思い描いたイメージに寄せていきます。
これはデジタルフォトの最大の恩恵です。フィルムの時代は大判のポラロイドで見せるぐらいしかできませんでしたからね。

デジタルになって写真の仕事は大変でしょう？と訊かれることがたまにありますが、私には良いことしかなかったと言って過言ではありません。
デジタル時代の撮影メソッド、この先も探究し極めていきます。

 

モデルの素材感

Black＆White のツートーン（厳密には中のシャツに淡い色がありますが）。オーディション写真の撮影はこのくらいシンプルな方が望ましいと考えます。

衣装に惑わされず、モデルさんの素材感がストレートに感じられるからです。

表情は控えめに、でもバリエーション豊富に。ニコパチを避けて存在感のある左のショットを採用しました。

 

オーディションのお手本のような佇まい

長年撮影させていただいているモデルさん。パンツスタイルを上手に着こなして、それも毎回雰囲気をガラリと変えて、オーディション向けのお手本のようにキマってます。

毛先の色みと淡い色合いのパンツがよく合っていて、明るくプレーンな印象のプロフィール。

体幹がしっかりしていて、少し難しめのポージングもそつなく自然にこなし、これまたお手本のようです。

 

日々の鍛錬は撮影にも現れます

第一印象はあどけない感じでしたが、ご要望は大人っぽいプロフィール。このギャップを埋めていくのは得意なシチュエーションです。

撮影の中で試行錯誤しながら大人っぽさにフォーカスしていきます。

勘が良くて器用なモデルさんでしたが、ポージングや表情もただ言われるがままでなく演じようとしている様子。考えるより先に体が動いて演じているような様子で、日々の鍛錬が感じられました。さすがです。

 

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